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甲子園がなくなった球児の思い

神奈川県の桐蔭学園で甲子園を経験した著者が、18年間の憧れを奪われた球児たち、監督がどう最後の夏と折り合いをつけたのか。

考え抜いた末に導き出した新しい言葉は、なんだったのか。

高校生だから、滲み出る想いはそういう感情になる。

高校生だから、そこに辿り着くことができる。

社会に出ている大人とは全く違う、青い苦しさと真っ直ぐさと謙虚さと。

10代の弱さと球児の強さと。

内に抱えているものと、将来を見据える眼差しと。

実力があり本気で甲子園の優勝を目指す、半端ない鍛錬をしてきた球児たちの内面を。

苦しんだ人はいなかったんじゃないかと思う2020年の夏を書き記した一冊。

最も印象に残ったのはこの一文。

「この夏のつらさ」って言葉にするとどういうもの?

「自分が懸けてきたものに挑戦さえできないことです」

このつらさを経験したからこそ、日常の当たり前が当たり前ではないことの重みを感じることができたと。それらはコロナがなければ知ることのできなかった経験だと。

2020年の球児はかわいそうだ、とよく言われるが自分たちの経験したことは誰もができるわけではないから。絶対にそれを強みにできると前を向ける強さを手に入れた彼ら。

青臭い高校生だからこそ、見習うべきところがある。

教えてもらえることがある。

監督が何をどう悩んでチームを導いたのか、キャプテンはどう振る舞い最後まで引っ張っていったのか。

前例がないからこそ、誰もが自身で考え抜き正解を模索するその様に、沸々と湧いてくるものがあり、目頭が熱くなる。

高校生ですら、そこを乗り越え真っ直ぐ前を向いて進んでいる。

我ら大人は、もっとしっかりしなければならない。

背筋をシャンと伸ばして。後輩に恥じないように前を見据えないといけない。

著書 『あの夏の正解』 著者 早見和真

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