その街に溶け込んでいる小さな書店が好きです。
新刊書店でも古書店でもどちらでもよい。
チェーン店では味わえない店主のこだわりとぬくもりが詰まっている、素朴だけど素材を活かしている定食屋のような。
本好きな私はいつもそんな書店を探している。
2016年1月に東京・荻窪に新刊書店「Title」がオープンした。
1階が本屋とカフェで、2階がギャラリー。
そこの店主、辻山良雄氏はこんな風に言っている。
同じように本を並べていても、誰かの真似ではなく、その人らしく語られたものであれば、人は自然とその声に耳を傾けるようになる。
一冊の本の持つ微かな声を聞き逃さないようにすれば、その店に並ぶ本は次第に光って見えてくる。
一冊ずつ手がかけられた書棚には光が宿る。
書棚に光を宿すのは、思いの詰まった仕事にしかできないことかもしれない。
そんな熱い想いを持つ店主の著書『小さな声、光る棚』は新刊書店Titleと共に生きる日々が書かれている。
奥のカフェを営んでいる奥さまとの会話や、よくふらりと立ち寄ってくれる常連さんとの一コマ、コロナ禍での書店の在り方など、今、書店を経営することとはこういうことの日常が淡々と綴られている。
ありそうでなかなかない、現実的に書店を営んでいる店主が書いた書店の中からの目線はとても興味深い。
読んだら足を運びたくなる、じっくり時間をかけて眺めたくなるこだわりの棚。
店主の想いが詰まった本の囁きが、私には聴こえるだろうか。
来月にでも車を走らせて行ってみようと思う。
著書『小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常』 著者 辻山良雄
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