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若さと斬新さと三島由紀夫の結合

人間が信仰を捨てることはままある。

そいでも信仰を取り戻すことなんてできるんでしょうか。

何かをふたたび信仰することはできるんでしょうか。

                    かか  宇佐美りん

うーちゃんは、「かか」を信仰している。

かかとは、母である。

温度がだくだくに溢れている。

なんなんだろう。この熱量は。

もう、うーちゃんの生々しくて体の奥にある赤いグニョグニョした塊の部分が、母である「かか」に共鳴して。

えぐられ、ざらつかせつぶされる。

大好きで愛しすぎている「かか」が、どうしようもなくなってきて、壊れていく日常のなか。

自分の居場所は鍵のかかったSNSのアカウントだけ。

そこで呟いてリピをもらって生きていると感じられる。

ありありと映像化できる家族の姿。

どうしても愛されなかったことの積年の寂しさが、自身を壊していく「かか」の生き方。

そのかかが母親の、うーちゃんの愛と悲しみと憎しみが。

うーちゃんのかかへの愛し方が、まっすぐで傷だらけで切なくて、涙が出てくる。

これがデビュー作にして三島由紀夫賞と文藝賞W受賞の文体かと。

2回、3回読んで凄さがじわじわと染み込んでくる。

この人、すごい。

宇佐美りん。21歳。

どんな生き方をしてきたら、こんな作品を書き上げられるのか。

宇佐美りんにはもはや、興味しかない。

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