舞台を世界にすると、その国ならではの美や文化が『書店』に反映されていて、とても興味深い。
日本では、厚さ10センチくらいあるような革の背表紙のハードカバーの、The哲学書みたいなのをずらーーっと並べても、きっと売れない。
事実、そんなヨーロッパにあるような書店がない。
さまざまな書店ガイドも読んできたけど、どこにも掲載されていない。
見たことも聞いたこともない。
しかしながら、私が好きなのはそういう雰囲気。
重々しいどっしりした書籍を並べている重厚感のある書店に憧れを抱いている。
どこも書籍だけでは利益が取れないから、多くはカフェを併設したり雑貨を販売したりしている。
そうすると、どうしてもポップで軽やかな明るい雰囲気になる。
ブックカフェなら、そうなってしかるべきとも思うけど。
知のテーマパーク『書店』の理想の店が日本にないことの、残念な気持ちの行き場がない。
この本は、今イチオシの世界の本屋さんを、質の高い写真を豊富に使って紹介するビジュアル解説書。
紹介するのは、建築、インテリアはもちろん、格式や先進性、業態のユニークさ、本の品揃え、オーナーの懐の深さまで、オンリーワンの特徴を兼ね備えたお店ばかり。
お店の歴史や書店を始めるきっかけ、取り扱う分野や、経営ポリシーなどを語るオーナーや店長インタビューと。
本屋で働く心構え、お客さんとの接し方、プロとしての勉強方法、仕事のやりがいなどを語る書店員インタビューの2本立て。
書店を開業する際に参考にしたい店のレイアウトや、棚の種類、色、大きさ、照明の形、照明の明度、通路の広さ、各ジャンルの書籍の量、見せ方など、もはや多々学ぶべきところしかない。
写真集にジャンル分けしたほど、写真がたくさん掲載されているから、ビジュアルで取り込めて実践で使いやすい。
そんな素敵な『世界の夢の本屋さん』を書かれた著者は、10数年のパリ暮らしを経て、現在はロンドンを拠点に取材執筆、翻訳、映像制作を行なっている。
著書に「世界で最も美しい書店」、「人生を変えた本と本屋さん」などがある。
独立系書店の紹介が強みで、世界の素敵な書店を探しては特集にして出版している。
私にとっては知的テーマパークである書店を、まるでそこの書店を訪れているかのようなワクワク感を味わせてくれる彼女の本は、とても知的好奇心をくすぐられる。素晴らしき1冊です。
著書『世界の夢の本屋さん』 著者 清水 玲奈