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心が空っぽになったら

ふと立ち止まるときがあるでしょ。

このせかいに。

歩みを止めて。

とまるとき。

そんなときにかぎって。

空は雲ひとつない青空だったりする。

空はこんなに青いのに。

心が空っぽになって。

歩みがとまるとき。

そんなときに、手に取ってほしい。

静かに。

淡々と書かれている文字の羅列に。

心の何かが反応する。

きっと。なにか。

たった一つの言葉にでも。

反応する。

そんな可能性がある本。

歩みがとまる日に。

すすめたい本なんて、そうそうないけど。

谷川俊太郎氏にはそんな時こそ。

心に風を通してくれる。

言葉の遣い師。

たとえば。

こんなふうに。

うつむく青年

うつむいて

うつむくことで

君は私に問いかける

私が何に命を賭けているかを

よれよれのレインコートと

ポケットからはみ出したカレーパンと

まっすぐな矢のような魂と

それしか持っていない者の烈しさで

それしか持とうとしない者の気軽さで

うつむいて

うつむくことで

君は自分を主張する

君が何に命を賭けているかを

剃る必要もないまばらな不精ひげと

子どものように細く汚れた首すじと

鉛よりも重い現在と

そんな形に自分で自分を追いつめて

そんな夢に自分で自分を組織して

うつむけば

うつむくことで

君は私に否という

否という君の言葉は聞こえないが

否という君の存在は私に見える

うつむいて

うつむくことで

君は生へと一歩踏み出す

初夏の陽はけやきの老樹に射していて

初夏の陽は君の頬にも射していて

君はそれには否とはいわない


こどもがおとなにそだつ本。

おとながこどもにかえる本。

そんな理念を掲げる理論社より出版。

谷川俊太郎氏の大好きな1冊。

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