夜の街、新宿には夜中もやっている薬局が5軒ある。
マツモトキヨシやドラッグセイムスなど大手もある。
食品や日用品も売っていて、便利なドラッグストアだ。
そんななか、メディアにも取り上げられ、注目を浴びている処方箋対応の小さな薬局がある。
「ニュクス薬局」である。
なぜ、「ニュクス薬局」が注目されたのか。
ニュクスとは、ギリシャ神話に出てくる「夜の女神」の名前らしい。
その名の通り、夜の8時から翌朝9時まで営業している。
歌舞伎町の街で生きている人たちは、地方出身者が多いという。
地方から上京して、体を壊したり心を病んだりして薬をもらいに寄る小さな薬局。
きっと暖かいんでしょう。
雰囲気が。空気感が。
この人なら聞いてもらえるかな。
この人になら、話せるかな。
それは、なんとなく話してみたい、聞いてもらいたい雰囲気が漂っている絶妙な広さの空間と、店主の人柄からだろうか。
そんな店主の名は、中沢宏昭さん。
店主であり、経営者であり、ただ一人の働き手である。
人はどこか弱っていると誰かに、寄りかかりたくなる。
人が密集していても、孤独な街と言われる歌舞伎町だからこそ、こんな小さな拠り所がきっと必要なのだろう。
「どうしたの?なんかあった?」とかいうなにげない言葉をかけられると、心の扉が開くのもわかる気がする。
孤独を感じやすい夜の深い時間ゆえに。
いつもそこにいてくれて、話を聞いてくれる人がいる場所。
薬をもらいにいかなくても。
ただ、話がしたくてとか、ちょっと息抜きにで立ち寄る人も多いらしい。
かかりつけ医じゃなくて、かかりつけ薬局。
ちょっと調子が悪い時に、医者に行くほどではない時など便利だと思う。
なにはともあれ、店主の中沢宏昭氏の魅力がニュクス薬局を注目させているわけであり、人は人に集まる。
東京は孤独な人で溢れかえっているということを実感したそんな一冊。
もっとディープな話が盛り込んであるのかと思いきや、ライトな話で構成されている。
フィクションではないから、実際に今夜もどこかの誰かが中沢氏のもとを訪れているであろう。
体を壊さないよう、末長く営業し続けていただきたい。
著書『深夜薬局』 著者 福田智弘