いまなら、称賛をこめて「わきまえない女」と呼ばれるかもしれない。
日本で初めて、ロシア正教のイコン(聖像画)を描く画家となった山下りん(1857~1939)。
時代の制約のなか、周囲とのあつれきも恐れず画業に身を捧げた生涯を、作家の朝井まかて氏が歴史小説『白光(びゃっこう)』(文芸春秋)に描き出した。
朝井氏は、直木賞、司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞など数々の文学賞を受賞されてる時代小説の名士である。
この本は、ロシアとキリスト教がテーマで、戦争の歴史の動きを織り交ぜつつその当時の女性の生き方や修道院の中の様子が描かれていて、まさに知らないことだらけで新鮮だった。
何よりおもしろいなと思ったのは、言葉の使い方。
言葉は時代とともに変わるものであるから、当時の話し言葉、書き言葉がそんな風に使うんだと、今よりもっと日本語が綺麗。
美しいなと。読んでいて、心が洗われる気がした。
今の売れている小説の中には、変化した口語がさまざま散らばっていて、なんとなくモヤモヤして読む気にならないものが多いが。
時代小説とは、そこの美しさに気持ち良さがあって、もちろん朝井まかて氏の筆致力がずば抜けてるからこそなのだけど。
もし時代小説が苦手な方で、読んでいる本の幅を広げたいと思っているなら、これなら手始めに読んでみるのはいいかもしれない。
著書 『白光』 著者 朝井まかて
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