この本はこの方々のお話である。
樹木希林さんと内田裕也さんご夫妻、その一人娘、内田也哉子さん。その旦那さんの本木雅弘さん。
まず、この非凡な家族のことを語られているのに、おもしろくないわけがない。
そして、脳科学の最先端を研究しながらも自身は超ネガティヴ思考で、決して生きやすい人生を送れているとはいえない中野信子さんとその旦那さん、さらには幼少期の中野信子さんと、ご両親のお話。
これを「家族」をテーマに、5回の対談を重ねたものをまとめた本である。
対談の中で、こんな興味深い質問があった。
Q. 内田也哉子さんへ質問です。家族にとっての愛人、不倫てどんなものでしょう。愛人、不倫に新和的な裕也さんと、それとは遠そうな本木さんの間の差異はなんですか?
それの答えはこう書かれていた。内田也哉子さんがある時、本木さん本人にこんなことを聞いてみたんですって。
「男性として、人としても、あなたと裕也はどう違うと思うか」と。
本木曰く、たとえてみると、自分は戦車をひとりで操縦して、その鉄の塊に守られた中から「どうぞ私には構わないでください。すいませーん、そこ通りまーす」と、控えめなようでいて、実はグシャグシャに辺りのものを踏んづけていく人間なんだそうです。
で、裕也の場合は、何の武装もなく、拡声器だけ持って、「おーい、俺の話を聞いてくれ。俺の話は間違っていますか?」と叫ぶ。そうして人と取っ組み合いのケンカにもなるし、痛い思いもするんだけれども、相手の意見も「おもしれぇな」と聞く。その結果、多くの人とシンパシーを共有する。そういう違いがあって、それは男女の関係にも通じているんじゃないかと言っていたと。
中野信子氏には、こんな質問をしている。
Q. 愛人にしかなれない人と、妻や母にもなれる人の境界って何ですか?
それの答えはこれです。AVPRというホルモンの受容体に、俗に「不倫遺伝子」といわれるものがある。たったひとつ、DNAレベルでいうとたった一文字違うだけで振る舞いが変わっちゃうという。なので、本木さんと裕也さんはおそらくDNAが一文字違うだけ。不倫に関しては、それがおそらく「違い」だそうで。何が変わってくるかというと、たった一人の人を大事にするか、みんなを広く浅く大事にするかという違いだそうです。
でも、その貞淑型と不倫型の人数の割合はおおむね5対5と推測されている。
ということは、もともと一夫一妻制の結婚には向いていないタイプが人口の半数ほどいるということらしい。
あーおもしろいね、こういうことが脳科学的に検証され、データが出た上で話されているから、なるほどねぇと納得しちゃう。
それに加えて、以前から好きだった樹木希林さん。
仏教的な生き方をされているなーと思いつつ、彼女がいったいどんな人なのか、娘の口から語られるがゆえに、我々が知りたくても知り得なかったことが羅列されていて、興味深すぎてこの本の続編をあと5冊は出してほしい。
社会通念というものをそれなりの年月をかけて学んできてしまうと、マジョリティとされている考え方が「これが正しいんじゃないかな」の判断の仕方に染まってしまって、そこからどれだけ外れているか、いないかで「間違っている気がする」という感覚を持ってしまうことはある。
しかしながら、樹木希林さん一家と中野信子さん一家は、超がつく変わり者ですが、その方達は人間界ではごく少数派でも、生物界だとどの生き方もノーマルであると。
全然生物としては、オッケー。何も間違っちゃいない。
少数派であっても、それでいいんです。マジョリティが正しいわけではないということを脳科学的に説明ができる!
そんなふうに言われたら、ほんとあなたはあなたのそのままで。それでいいんですっ!て言い切れる。
この本、自己肯定感があがりそう。
そんな学びもできつつ、やっぱこの人たちすごいなと思えるわ。さすが。おもしろかった。
最後に、中野信子氏の最新刊、『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』も書店で見つけたので、買って読んでみた。それはこちらのページへどうぞ。
ご自身の家族にはいろいろとトラウマがある中で、メンサに所属できるようなIQの持ち主が、頭のいい人とはこういう習慣をしている。
ということを、発見し教えてくれる。仕事、勉強、人生がうまくいく脳科学的に正しい31の習慣として、こちらも実に興味深かった。
凡人はこの中から3つでもモノにできたら、万々歳である。